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+++ 輝きの欠片−第5話− +++

(む。一体ここは何だろう?なんだか実験室みたいな感じもするけど・・・)
ジョーは実験室かも知れない危険な場所で、全くそぐわない姿の蝶に化けていた。
劣等生らしい魔法である。
バサッッ!!
「わ!!何だ!?」
突然体の自由を奪われた。どうやら虫網で捕まったよう。案の定あっさり見つかった訳だ。
「小僧。そんな姿じゃ、すぐに見つかるだろうさ。ははは」
「く・・・ちゃんと変身していたのに、何故だろう」
虫網から蝶のジョーを掴みだし、スカールの手下の一人が言った。
「まだ将来のある身だが、悪いな。お前の命は頂くぞ。」
スカールに命じられた手下が、小さな蝶のジョーを握り潰そうとしていた。

「う・・・こ、こんな事で死んでたまるか・・・」
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元の姿に戻ったジョーは襲いかかる追っ手を次々に殴り倒した。
そのうちの一人の腕を捻りあげて言った。
「大きな声を出すと、腕が折れちゃうよ?フランソワーズは何処だ」
自分でも驚く程の腕力で敵を倒していた、と思っていたが・・・。
「く・・・なかなかやるな。さすがスカール様が・・・最初に見込んだだけのことはある」
捻り上げられた腕の痛みを堪えて、スカールの手下が言う。
「な、何だって!?」
魔力を使いながら敵を倒していたことに、全く気が付いていなかったジョーはその言葉を疑った。
「お・・教えてやろうか?お前の魔力に、さ・・最初に目を付けていたのは、スカール様だ」
「スカール?園長のことか?」

ビビビビビビビ!!!

もの凄い電流が体中に流れ、ジョーは意識を失ってしまった。
「っち、手こずらせやがって」
痛む腕を撫でながら、スカールの手下は言葉を吐いた。


「”飛んで火に入る夏の虫”だな」
「う・・・・」
聞き覚えのある男の声に意識が戻りジョーが最初に目にした物は、長いこと拘束され、
その上、力のほとんどを吸収されて魔力の弱まって疲れ切っている姿のフランソワーズだった。
その横には学園長・・・またの姿を悪の組織ブラックゴーストのボス、スカール。
「フランソワーズ!!」
「ジョー!!ごめんなさい、こんな目に遭わせて」
「何言ってるんだフランソワーズ」
こんな時にまで、同じに拘束されている自分を気遣ってくれるフランソワーズが悲しかった。

「束の間の再会で悪いが、そろそろ時間でな。序でだ、お前の力も頂こうか?ジョー・シマムラ。
そして我々の夢を酷とご覧いただこうではないか」
「そんなことはさせないぞ!」
「ほざくが言い、小僧」
「くそぉぉーーーーー!!」
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「どんな魔法を使おうとも、我に効き目はない。
所詮自分の力を物に出来ぬままの未熟の魔法人めが」
その言葉の裏にはジョー自身の魔力が強すぎる為、
コントロールが出来ないでいる彼の事を知っているらしかった。
「ちくしょう・・・」
全く身動きが取れないジョーは、歯を食いしばり自分の力の不甲斐なさを恨んだ。

「始めろ」
スカールの声に畏まった白衣の男たちが、至る所にあるジョーたちには全く訳の分からないような
大きな機械を操作し始めた。
と・・・その時、
「うわあああああああああ!!!!!」
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ジョーの叫びと共に誰も見た事のない様な魔力のオーラがフランソワーズ目掛けて尾を引いた。
例えようもない程に瞬く光の帯に一瞬誰もがその動きを止めた。
今まで一緒に過ごしてきたジョーの表情とは思えないような、鋭く引きつった瞳、
その瞳の奥には何か漲っているように思えた。
こんな荒々しい顔のジョーを、フランソワーズは知る由もなかった。
そしてジョーの体がうっすらと消え仕始めた。

ジョーは最終魔法である『同一化の魔法』を放っていたのだ。
同一化の魔法とは、二人の力を一つにすると言う単純な魔法であるのだが、
その欠点は、放った側の者が相手に吸収され失われると言うものであった。
簡単に言えば、死に等しいと言うこと。
それを取得するには魔法学園で優秀極まりないフランソワーズでも程遠い試練の道のりを
歩んでいなければならない、未知の魔法である。
ジョーの姿が怒りと悲しみ、そしてフランソワーズへの愛情が込められた透明な光に変わる。

「ダメよ!ジョーーー!」
フランソワーズの声も虚しく、ジョーの体は見る見る消え、
次第にフランソワーズの体へと吸収されていった。
「うう・・・ジョー・・・・」
フランソワーズの声が涙に変わった。
『フランソワーズ聞こえるかい?時間がない、早く君の力でここを破壊するんだ』
頭の後ろの方からジョーの声が聞こえる。
「ジョー?ジョーなの?わたし、どうすればいいの?」
涙と恐怖と事の流れの不安とで、声が震えている。
『大丈夫だよ、君は優秀な魔法人なんだから』
優しく穏やかなジョーの声、いつもと変わらぬその声に少し安心したのか、緊張した表情が緩む。
「やってみるわ」
『うん』

「何をやっているんだ!?さっさとやれ!このうすのろ共」
ジョーの魔法をぼうっと見入っていた白衣の男達を除け、スカールが慌てている。
世界征服まで後僅か・・・指先のボタンさえ押せば・・・暗黒の闇が訪れる・・・。

ドクン・・・ドクン・・・ドクン・・・

「お願い、ジョー、わたしを、助けて・・・」
光に包まれたフランソワーズは目を閉じ、祈る思いで魔法を放った。
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フランソワーズが目を開くと、そこは息を飲むほど凄まじい残骸だらけだった。
ゆっくり起きあがり、爆発に飲まれることなく無傷の自分に気付く。
「ジョー・・・何処へ行ってしまったの?」
我に返り消えてしまったジョーに涙を流した。

大きな爆発によって人々が集まりだす。
ガヤガヤとするざわめきの中に居るのにも関わらず、
フランソワーズの心の中は静かすぎるほど静まり返っていた。



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