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+++ 輝きの欠片−第2話− +++

「ん・・・ここは・・・何処・・・?」
「目を覚ましたかい?お嬢さん」
声の方に首を向けるのが精一杯の体制であることに気付く。
「誰?誰なの!?」
黒服の男がフランソワーズを拘束した台の横に立っている。
その周りには数人の白衣を着た研究者達の姿。
「フフフ・・・お嬢さん、君の力が欲しいのだ。協力してくれるかい?
そうすれば命だけは助けてやってもいいがね」
「・・・え?わたしの・・・力?」
声が震える・・・でも視線を逸らさず黒服の男をまっすぐ見据えているフランソワーズ。
「そうだ、お前の力だ。その魔力を我に使わすのだ。
そして世界を征服するのだ。わはははははははははは・・・」
黒服の男の笑い声がいやに響いて、耳障りだった。
フランソワーズは顔を背け、苦情の顔を見せた。
「では、後を頼んだぞ」
「はい」
そう言い残し黒服の男はその場を後にした。

「あなた達は何を考えているの?一体何者なの!?」
「そうだな、世界を征服する為に力を合わせる『共』なのだ。教えてやろうじゃないか。
あの方は我らが誇る暗黒の神、スカール様だ。我々ブラックゴーストが世界を征服すれば、
今よりももっと平和な地球になるだろうよ」
白衣を着た研究者の一人がフランソワーズに近づいてきた。
「さぁて、お嬢さん。早速君の力を拝借するよ」
恐怖で強張るフランソワーズを後目に、
彼女の魔力を吸収する為に備え付けられている機動スイッチを押した。
「いやっ!やめてーーーー」



チュンチュン・・・。
フランソワーズがそんな目に遭っているとも知らず、ジョーはいつもと変わらぬ朝を迎えていた。
「ふぁぁぁ〜」
大きな欠伸をして、寝ぼけた顔のジョー。
「朝か・・・。なんだか憂鬱だな」
顔を洗いトーストをかじり入れ立ての熱いコーヒーを啜るが、いつまでも眠たそうな顔が直らない。
昨夜はほとんど眠れなかったのであろう様子が伺える。
今朝もまた重たい足取りで家を出て、学園へ向かった。

「あ・・・そうだ、迎えに行かなくちゃ」
昨日の帰り際に、フランソワーズに迎えに来てと頼まれたのだった。
普段ならフランソワーズに会うのも喜びの一つなのだが、今朝のジョーには少し重く感じた。
昨日の魔法試験で落ち込んでいる自分を気遣ってくるであろう彼女の姿を思い浮かべると、
心苦しくてしかたがなかったのだ。
「はぁ・・・」ため息を一つ漏らした。
彼女の自宅までの道のりは遠く感じる。跳ねるような足取りで会いにゆく普段とは全く違う。
そんな状態でいてもフランソワーズの自宅までは辿り着いてしまうのだ。
「はぁ・・・」またため息が漏れる。
フランソワーズに落ち込んでいる自分の姿を見せないように顔を整え、元気を装った声で呼ぶ。
「おはよーフランソワーズ!迎えに来たよー」
・・・・・・返事がない。
「フラーン!おぉーい」
・・・・・・。
「あれ?先に行ったのかな?」
でも、約束を破るような彼女ではなかったから、納得いかない面もちで家のドアを開けた。
(開いてる・・・不用心だなー。あ、兄さんが居るのかな?)
そんなことを思いながら部屋の入り口まで入って覗き込んでみた。
「お邪魔しまーす。あのーすみませーん」
思わず余所余所しくなってしまう。やはり部屋の中はシンと静まり返っていた。
「なんだか変だな」
適当に部屋の中を歩き回り、リビングのテーブルに気付いた。
二つのティーカップに冷め切った紅茶が入ったままだ。
温かいときは甘い香りが立ちこめていたであろう、アップルティー。
一つは入れかけなのか?それとも飲みかけなのか?
カップが汚れていない状態であることで、口は付けていないようだった。
「どうしたんだろ、一体・・・」

妙に不自然なテーブルの状態に、その場に立ったままぐるりと見回した。
そして何気なくキッチンの方向に足を運んだジョーの肩がビクッと上がる。
誰かの手が床に落ちているのが見えたのだ。
まっ・・・まさか!?
「フランソワーズ!?」
慌てて走り寄ると、それはフランソワーズの兄、ジャンであった。
し・・・死んでいるのか・・・?
恐る恐る体に近付くと、辛そうではあるが背中が静かに上下していて
呼吸があることが分かった。
「ジャン!しっかり!僕だよ、ジョーだよ」
ジャンの体を起こし、自分の腕に横たえた。
「う・・・ジ・・・ョー・・・か?」
薄目を開け、視点の合わないような瞳でジョーの姿を探している。
「うん、そうだよ。大丈夫かい?ジャン。一体何があったんだい!?」
「フランが・・・くっ・・・・」
「フランソワーズに何か!?」
「・・さらわ・・れ・・・・た・・・」
「さらわれたって、何か心当たりは?」
「ぶら・・・くご・・」
ジャンは体をそのままずっしりとジョーに預けてしまった。
「ジャン!何?ジャン!?」

(ダメだ・・・意識を失っちゃった。取り合えず病院に行かないと)
ジャンを担ぎ立ち上がろうとしたが、気を失っているジャンの体はとても重く感じた。
(ようし、いっちょやってみるか)
覚え立ての魔法を使ってみることにした。

「えいっ」
. : * :・’゜★ . : * :・’ヨボ…

「む。やっぱりダメか〜」ため息が漏れる。
「まじめに授業受けておくんだったな」今までの素行を悔やまれる思いがした。



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