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+++ 輝きの欠片−第1話− +++

「おはようジョー。調子はどう?」
「おはよー、フランソワーズ。調子は・・・どうかなぁ」
「今日の試験には合格しないとね」 
「うん、そうだね。いい加減僕は、この試験は最後にしないとな」
「お互い頑張りましょ」

ここはとある魔法学園。彼らはこの学園の生徒である。そして今日は魔法試験。
フランソワーズはこれが最後の試験になるはずである、この学園始まって以来の優等生。
これに合格すれば、一人前の魔法使いとして認められるのだ。
反するジョーは何度も魔法見習いの試験を受け続け、既に両手に余るほどの回数である。
いわば、不釣り合いのカップルであった。

「じゃ、後でね」
「うん、絶対合格するからさ!」
「うふふ。その意気その意気」
軽く手を振り合い、それぞれの試験場に向かった。

フランソワーズの後を追う怪しい影には誰も気付いていなかった。

「さて、これより試験を始めます。フランソワーズ・アルヌール、前へ」
「はい」
「君はこの学園始まって以来の素晴らしい能力を持つ生徒だ。
みなの手本と成るよう、頑張ってくれたまへ。期待しています」
「はい。精一杯頑張ります!」
(ジョー・・・頑張ってね・・・)

「それでは、始めて下さい」
「えいっ」
☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°キラキラ
☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°キラキラーン
☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°キララーン


「試験を始めます。ジョー・シマムラ、前へ」
「はい」
「君はそろそろ見習い試験を合格して、次のステップへ進むように努力して下さい」
「はい、頑張ります」

「では、始め!」
「それっ」
. : * :・’゜★ . : * :・’゜★ . : * :・’ . : * :・’゜★ . : * :・’゜ヘナヘナ
「えいっっっ」
. : * :・’゜★ . : * :・’゜★ . : * :・’ . : * :・’゜ヘナヘナヘナ
「これでもかっ」
. : * :・’゜★ . : * :・’゜★ . : ヘナ
「うりゃ!」
. : * :・’゜★ . : ショボ…
「・・・・・・・」


そして数時間後、試験は無事(?)終了した。
「えー。みなさん、各自力を出し切って頂いたと思います。ご苦労様でした。
試験の結果は3日後、各試験場の入り口にて発表いたします。それでは解散」


「あら、ジョー。お疲れさま」
自信満々といった表情のフランソワーズが、肩を落として歩いているジョーの元へやって来た。
「あぁ、フランソワーズ・・・。僕の顔を見れば一目瞭然だろうね・・・」
がっくりするジョーに、すっきりとした笑顔で元気付けるフランソワーズ。
「でも、また次を頑張れば良いじゃない!ね?」
「うん・・・でも君は試験に合格すれば、この学園を離れてしまうんだね・・・」
その言葉にはっとして、フランソワーズはすっきりした笑顔から、
柔らかい微笑みへと表情を変えた。
「大丈夫よ。わたし達はずっと変わらないでしょ?」
「・・・・・・」
「ね?元気を出して」
ジョーの冷たい手を優しく包み込んで、黙ったまま歩き続けた。
再び二人の背後に忍び寄る影があったが、その気配に気付くことはない。

沈黙のままに歩き続け、フランソワーズの自宅付近まで辿り着いた。
「ありがとう、ここで良いわ。兄が待ってるの、ごめんなさいね。また明日」
「うん。また明日・・・」
ジョーの背中が寂しそうで、後ろ髪を引かれる思いがして叫んでいた。
「ジョー!明日の朝、迎えに来てねー」
太陽のような笑顔で大きく手を振ってみせるフランソワーズ。
背中越しにちらっとみて、頭の上で軽く手を振ったジョーは、またゆっくり重い足取りで歩き始めた。
「ジョー・・・」
気を落としているジョーの背中を見送り、ぽつりと呟いた。


「ただいま、ジャン兄さん」
・・・・・・。
「今帰ったわよ?ジャン兄さん」
・・・・・・。
「おかしいわね、今日は早く帰って来るようにって言っていたのに。
何処へ行っちゃったのかしら?」
先に着替えてこようと思い、自分の部屋のドアノブに手が掛かった時、ジャンの声がした。
「お帰り、フランソワーズ」
「あら、ジャン兄さん居たの?何度も声を掛けたのよ!?」
「そうか、ごめんよ。お前に話したい事があるんだ」
「話?待って、すぐ着替えてくるわ」
そう言って部屋へ入ってゆく。
(今日のジャン兄さん、なんだか変だわ。どうかしたのかしら?
それに・・・改まって話しなんて・・・)

着替えてリビングへ向かうとジャンの姿はなかった。
「兄さん?ジャン兄さん?」
・・・・・。
テーブルには二人分のティーカップに暖かいアップルティーが用意されている。
ただし、一つは半分までの入れかけ・・・。
カタ・・・ン。
「ジャン兄さん・・・?」
物音に振り向くと、そこには邪悪な黒い影が!!
「キャーーーーーーーーーー」



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