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+++ 永遠のかたち 第2話 +++

「ふふふ・・・」
「何がおかしいの?」
笑いを漏らすアリスに怪訝そうな顔でいるジョーの髪を潮風が掻き上げた。
「変わってないわね、ジョー」
「え?」
「あなたの瞳。独特な優しい色をしてるわ」
「・・・・君は・・僕の何を知ってるの?」
「全てよ」
「全てって・・・」
「正確には、昔のジョー、って言ったらいいかな?」
「昔の?」
「そうよ。昔の!」
「・・・・・」
「それに、この間も逢ったばっかりよ?ジョーは覚えていないかも知れないけど」
「いつ?何処で?」
「7月7日に」
「7日ってそれ、僕が一人で旅をしている時じゃないか」
「覚えていなくて当然よ、気にしないで」
「気にしないでって言ったって・・・」

ジョーの言葉など耳に入っていないかのように、話題をころころと変えるアリス。

「ねぇ。彼女、ジョーの事好きなのね。あなた達恋人?」
「え!?や・・ち、違うけど」
「この間は、恋人なんて居ないって言ってたくせにね!」
「ちょっと待ってよ、君、本当に誰なの!?」
「だから、あたしはアリスよ!」
「それって本当の名前なの?」
「もぅ!また同じ事説明させる気!?」
「また!?」
「ふふふっ、意地悪してごめんね。さ、行きましょ!」

そう言って徐に腕を組んで、小首を傾げる少女はとても愛らしく
人懐っこい子猫の様に見えた。
研究所では、フランソワーズが戻ってくる二人の為に冷たい飲み物を用意していた。
ただ、ちょっとだけ荒っぽかったのは気のせいなのか。

「お帰りなさい」
「うん、只今」
「お邪魔します」
腕を組んで戻ってきた二人に、フランソワーズは何も言えずにそっと視線を外した。
「博士とイワンは?」
「今日はコズミ博士の所で研究の相談とか言ってたわね。
 もう出掛けたみたいよ?」
「そうか・・・」
少し残念そうなジョー。
イワンの力でアリスの心を読み取って貰おう作戦は無惨に散った。
「さぁ、冷たい物でもどうぞ」
「ありがとう」
3人は窓越しのテーブルを囲むように腰を下ろすと、
渇ききった喉を冷えたレモネードが潤した。

「所で、さっきの話の続きだけど」
「続きって?」
「僕の昔を知ってるって言ってた」
「あ〜あれね、忘れて!」
「忘れてって、僕の名前だって知ってるじゃないか!気になるよ」
「ふふふっ」
フランソワーズの方にちらりと視線を移して、口元に笑みを浮かべるアリス。
その視線はまだジョーへと向けられた。
「ジョーは昔の事、何も覚えていないの?」
「いや・・・何もって訳じゃないけど。少なくとも君の・・アリスの事は覚えていないんだ、ごめんね」
「そう。ちょっとがっかりだわ」
二人のやり取りを神妙な面持ちで聞き入るフランソワーズ。
「あたし、ジョーのフィアンセなのよ」
「ええっっっ!?」
「約束したじゃない。大きくなったらお嫁さんにしてねって」
「・・・・・」
フランソワーズは静かに目を閉じ、席を立とうとする―――が、
「でも、昔の事よ、子供のお飯事。気にしないでフランソワーズ」
「べ、別に気にしてないわ。それに、わたし達そんな関係でも無いから」
キッパリと言い切るフランソワーズは、ジョーよりも潔かった。
「二人共同じ事を言うのね。気が合う証拠かしら?」
アリスは二人を掻き乱すように痛いところを突いてくる。

「あの・・・何が目的なのかしら?」
真相を確かめるべく、フランソワーズが切り出した。
「目的?目的なんて何もないわ。ただ・・・」
「ただ?」
ジョーが興味深そうにアリスを見つめる。
一体、君は僕の何を知っているんだ?ジョーにはそれだけが気がかりなのだが。
「ジョーに逢いたかった。それだけじゃダメ?」
「僕に?」
「そうよ!だってあたし、ジョーの事好きだったんだもの」
「☆!?」
フランソワーズの胸に大きな痛みが走った。



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