「かごめーーーどこだーーー」 殺風景な岩肌が広がる謎の世界へ踏み込んだ犬夜叉は、 かごめの匂いを求めて駆け回っていった。 腹の傷は治まるどころか、止め処なく血液が溢れていた。 血痕を残してもなお、犬夜叉は休むことなく走り続けた。 「かごめーー!!!」 ふと、遠目に座り込んだままのかごめの姿を見付ける。 ようやく見付けたかごめの姿に笑みさえ浮かべ駆け寄るが、 その姿は一糸纏わぬ生まれたままの姿。 はたと脚が止まった。 露わになったその素肌に、慌てて着ていた衣を脱ぎ捨てた。 「なーにやってんだ、おめえ」 背を向けたまま声を掛けるが返事がない。 「おい、着替えたか?」 恐る恐る振り向くと、そこにかごめだと思ってていた者はなんと桔梗で・・・。 「なっ!?」 「犬夜叉・・・」 「ばっ・・よせって・・・」 迫る桔梗にあくせくする。 そして、何者かの視線を感じる。 その感じる視線を辿り、その者を見付けると犬夜叉は硬直した。 「かごめ!?」 ![]() 二人の視線が絡み合うと、かごめは逃げるようにその場から立ち去った。 「待て!違う・・これは!!」 その状況で、ふと我に返る。 違う。匂わねえ・・かごめの匂いも、桔梗の匂いも・・・全く感じねえ。 そうか、これが白童子に見せられた映像か。 それに気付くと、目の前に居た桔梗の姿が枯れ枝へと代わり、燃え尽きた。 「あいつ・・こんなもん見せられて、まんまと白童子の罠にはまったって訳か」 そんな独り言を呟き、その事に腹立たしく思えてならなかった。 「かごめのやろう、見つけ出して小突いてやらあ!!」 「きゃ!!」 突然かごめの足下が崩れ始めた。 「何!?今度はなんなの!?」 ガラガラガラ・・・大きな音を立てて地面に亀裂が走る。 「なんだろう。なんだかこの世界が不安定になってきてるわ。 早く出口を見付けないと危ないわね」 そう言い、亀裂を避けるようにまたひたすら走った。 犬夜叉もまた同様、亀裂の走る大地を蹴り付けて走り回っている。 「ん?何かしら?」 かごめが気付いたのは、赤く転々とした血の跡。 まだ新しいわ。怪我してる。誰か近くにいるのかしら? 「誰かーーいるのーーー??」 見渡しても人の気配すら感じない。 でも、あたしの他に誰か居ることは間違いないわね。 そう感じ取ると、血の跡を辿ることにした。 「かごめーーーっっっっ!!」 ふと風の流れを感じる。 「ん!?」 この匂い・・・間違いねえ、かごめだ。 匂いの主を求めて先程より更に力強く駆けだした。 この見渡す限り何もない大地で、かごめが見付けられないはずはない、 犬夜叉はそう思っていた。 例え、何者かに捕らわれていたとしても、無事に助け出す自信はあった。 その根拠は何もないのだが・・・。 互いにその存在を求めて走り続けていたが、その姿すら見付けられぬ。 次第に犬夜叉の額に、苦情の汗が滲んできた。 どうやら腹の傷が堪えているらしかった。 「くそっ、こんな傷如きに・・・」 かごめもまた疲れ果て、息をついて大地へと座り込んだ。 「この血痕・・ここで終わってる・・・」 ![]() 肩で息を切らせたまま見つめていた血痕から視線を一点反らすと、 そこに不自然な血の跡があることに気付いた。 「なんだろう・・?」 今まで追ってきた血痕より遙かに量が多く、と言うよりも、 どんどんその量は増しているように思えた。 恐る恐るその血の溜まりに触れようと手を伸ばした時、 何か違和感を感じた。 「誰っ!?」 膝を付き、痛みに耐える犬夜叉にもその違和感は感じ取れた。 かごめの匂い・・・こんなに近くに感じるのに・・何でだ。 何で姿を見せねえんだ・・・。 滴り落ちる血にまみれた犬夜叉は、 自らの血の溜まりに何者かの陰が映っているのに気が付いた。 ほっそりとした指先のような陰・・・。 ぼんやりする意識でその陰に触れようと手を伸ばした。 「!!」 かごめは何かに手首を握られた事にひどく驚き、その手を引っ込めようと藻掻いたが 掴んでいる何者かの力によって振り払う事が出来なかった。 「何!?なんなの!?」 そして、ある事に気が付いた。 この爪の感覚・・・これは犬夜叉!? 捕まれた手首に慣れ親しんだ感覚を覚え、 それが犬夜叉の物と思い当たるまでそう時間は掛からなかった。 まさか・・犬夜叉・・・この血は犬夜叉のもの!? 「ねえ、犬夜叉、居るんでしょ?」 「!!」 掴んだ陰に犬夜叉は驚きを隠せなかった。 これは、女の手だ。匂いといい、この腕といい、かごめだ、間違いねえ。 「かごめ!!」 繋がれた手を探る二人。 同じ場所にいて別々の空間の中にいる。 何故か時代の違う二人が、同じ時を共有したいと互いを求めているようだった。 |
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