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+++ ホワイト・シェル 〜忘れられないあの夜 〜 後編 +++

その頃地球では、陸地に移動したゼロゼロナンバー達とギルモア博士を
静かな夜が包み込んでいた。
どのくらい時が経っただろう。
浜辺には夜空を見上げたまま独りたたずむフランソワーズ。
その手には波に打ち上げられた白いクモ貝の貝殻が握られていた。
みな、無言のまま星の瞬きを見詰めていた。

「ジョー・・・。 ジェット・・・。 どうしているの?」

「フランソワーズ、もう 諦めよう」
フランソワーズの背後からハインリヒが声をかけた。
「諦める!?何故!?数時間前まで一緒に戦っていたのよ!?
どう諦めればいいの!?わたしは信じてる!
必ず二人は生きて戻ってくるわ!」
潤んだ瞳は月の光を浴び、蒼く蒼く輝いていた。

「人はいつかこの世界のどこかで塵になる。
そしてその命は星へ帰るんだ・・・」
「・・・・・」

「ジョーーーーーーーー!!!」
悲痛なフランソワーズの声が静かな闇に溶け込んでいった。
と、その時、かすかにフランソワーズは感じたのだ。
彼女の耳に聞こえるわずかな『音』を。
「・・・・感じるわ・・・・」
「えっ!?」
その声に立ち上がり、フランソワーズを取り囲むように集まる仲間たち。

「何処だ!?何処に居るんだ!?」
「まだ分からないわ・・・でも感じるの・・・」
数億万と輝く夜空を見渡し、ある一点でフランソワーズの目は止まった。
「あそこ・・・あそこだわ!!」

「イワン!!頼む!!」
仲間たちは超能力ベイビー001に託すしかない。
「ヨシ、ワカッタ。ヤッテミヨウ」
ギルモア博士を含む9名を超能力でテレポーテーションをさせたのだ。
残る力は後わずか・・・。
「神様お願い、二人を・・・助けて・・・」
両手を硬く握り締め、祈りをささげるフランソワーズ。
みなの気持ちはただ一つ、二人を、仲間の生還を待つのみだった。

イワンの精神を二人の命の綱として最後の力を込めた。
「ウッッッ・・・」
と、その瞬間・・・二人が彼らの目の前に。
「おおおおおおおお!!!」
イワンは自分の持てる全力を振り絞った。、
疲れ果てたのだろう、たちまち深く眠りについてしまった。

砂浜にはイワンのテレポーテーションで連れ戻された二人。
意識を失っているものの、命は何とか取り留めたジョーとジェットが横たわっていた。
「ジョー!!ジェット!!」
駆け寄る仲間たち。
涙を堪えきれずに、ジョーの胸に顔を埋め、泣きながら声をかけるフランソワーズ。
「しっかりして!!ジョー!!ジョー!!」
その声に答えるようにふと意識を取り戻したジョーに、
ぽろぽろと涙を散らしたフランソワーズの顔がぼんやりと映った。
「フ・・・ランソワー・・・ズ・・・」
「ジョー!よかった、よかったわ無事で」
不安から一転して喜びに変わったフランソワーズの声。
美しく輝く蒼い瞳からは、後から後から月の光を浴びた雫が溢れては落ち、
溢れては落ち、まるでジョーに命を注ぐかのように頬を濡らしていた。

「ジョー、ジョー良かった・・・ありがとうジェット・・・」

掛け替えのない仲間。掛け替えのない人・・・。
ジョー・・・愛しているわ・・・。
自分の気持ちが、まるで薄雲が晴れ渡るようにはっきりした瞬間だった。

__________


「フランソワーズ!フランソワーズ!まだかい?」
ジョーの声に我に返るフランソワーズ。
「あ、ごめんなさい。ねぇ?この服、どうかしら?」
フランソワーズの姿に見とれ、ちょっと戸惑いながら、
「うん・・・良く似合うよ」
薄茶色の前髪で照れ隠しをするジョーが言う。
「うふふ」
白い貝殻を手にしているフランソワーズが優しい笑みを浮かべた。
「ん?なんだい?」
ちらっとその貝殻に目を落としつつ、不思議そうにフランソワーズをのぞき込んだ。
「ううん、なんでもないの。さ、行きましょ」
「うん、そうだね。行こうか」

ジョー、ありがとう・・・生きていてくれて。
もう何処にも行かないで。


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